シンポジウム 開催の御礼

2012年7月1日 盛岡市アイーナに於きまして インクルいわてシンポジウム「ひとり親家族支援を考える」を開催いたしました。ご後援、ご協力いただきました皆様の温かい支援により全国各地から約100名の方々にご参加いただき、無事終了することができました。誠にありがとうございました。
被災地で行政、当事者団体、被災地の医療の現場、それぞれの立場の方が一堂に会し、共に支援のあり方を考える機会となったことに、まずは大きな意味があったと思います。ご参加くださった方も、行政、民間団体、地域支援者、研究者、学生、一般市民、ひとり親家庭の方々、さまざまであり、質問も多く寄せられました。
今まで十分に認識されてこなかったひとり親家族の現状と、就業環境、子育て環境、社会保障制度をめぐる問題点を、それぞれの立場の方々と共通認識にしたことに大きな意義があり、岩手の復興と生活再建への確かな一歩になったのではと考えております。
当シンポジウムを開催するにあたり、全国の多くの皆さまから、応援メッセージをいただきました。この場をお借りしまして、心から感謝申し上げます。
寄せられたメッセージには、私たちのビジョンやミッションを共有する嬉しいお言葉が並び、岩手から遠く離れていても、インクルいわての活動を応援しくださるという、温かく、そして、心強いものでした。
「社会的包摂」を理念とする岩手初のひとり親支援団体へメッセージは、熱く、身が引き締まる思いで、メンバー一同、決意を新たにいたしました。同時に岩手で奮闘しているひとり親家庭のみなさん、地域のみなさんにとりましても、大きな支えとなったものと思います。

つながり、支え合い、家族のカタチにかかわらず、誰もが生き生きと暮らしていける包摂された社会(Inclusive Society)の実現に向けて、今後も活動を続けていきます。私たちと共に歩んでください。今後ともよろしくお願いいたします。

                               NPO法人インクルいわて 一同
                 


シンポジウム3




インクルいわて シンポジウム 報告

 シンポジウムは3部構成で開催しました。
1部は 阿部彩さん(国立社会保障・人口問題研究所)をお招きして、「ひとり親家族の現状:震災、貧困、社会的排除」と題する基調講演をいただきました。40分という短い時間ではお話しきれないほどの豊富なデータに衝撃を受けました。
ひとり親世帯の2人に1人が貧困(ふたり親世帯は10人に1人)、OECD加盟国の中でワースト1のひとり親世帯の子どもの貧困率の高さ、この問題は日本社会の課題の縮図であること、先進諸国の貧困の子どもの10人に1人は日本の子どもであること、公共料金の未払いや、債務の滞納、賃貸住宅費の滞納、受診抑制など経済的制約を抱えている世帯が相当数存在することなどが、各種統計や調査データを踏まえて示されました。そして阪神・淡路大震災では震災後の経済的影響は5年以上経過してからも悪化し、震災後に上昇した「復興感」が3年後から再度下降する復興曲線を示し、一時的な支援と暖かいまなざし(災害ユートピア)は時間と共に関心が薄れていくが人を支える支援が必要なのはこれからだと示唆されました。
 
インクルいわてのメンバーが震災前からそれぞれの支援現場において肌で感じていた、ひとり親家族の生きづらさ、しんどさが、まざまざとデータで示されました。


第2部では、5人のパネリストの方々に、話題提供をいただきました。
まず、菊池秀樹さん(岩手県保健福祉部児童家庭課健全育成担当課課長)より、岩手のひとり親世帯の現状と県の取り組み、各種支援制度、震災後の遺児家庭(ひとり親家庭となった児童481名)支援について、お話をいただきました。

続いて、母子家庭支援の当事者団体であり、日本でも先駆的な活動を行っているNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(東京)の赤石千衣子さんより、当事者の目線から行ってきた活動と、東日本大震災の被災者支援の報告をいただきました。しんぐるまざあず・ふぉーらむの皆さんは、積極的に被災地支援に入られていて、岩手でも、私たちインクルいわてと共に、お茶っこサロンを開催したり、沿岸訪問に回られたりと、ご尽力くださっています。

父子家庭支援の当事者団体「宮城県父子の会」代表の村上よしのぶさんからは、父子世帯の公的支援が乏しいこと、気軽に相談できる窓口や組織が少ないこと、社会的認知度が低くて地域や職場の理解が乏しいこと、母子家庭同様、家事・育児に追われて疲弊していること、社会から孤立しているのが一番の問題であることなどが話されました。この震災で妻と死別し父子家庭となっても「遺族年金」が受給できないことなど、社会保障制度への問題提起と、宮城県という同じ被災地での父子家庭支援活動についてご報告いただきました。

小野寺けい子先生(川久保病院小児科医師/盛岡医療生協理事長)は、岩手の医療現場からみた子どもの貧困について、ご報告をいただきました。川久保病院は無料・低額診療事業を行っていますが、実際、お金がないと病院に行けない実態があること、貧困家庭における歯科・口腔問題(親子ともに)、保険医協会受診実態調査からみる受診抑制、未納金問題などの例を挙げ、子ども医療制度の創設と、子どもの権利条約が守られているか見守る必要性があることなどをお話いただきました。

最後に、インクルいわての代表の山屋が、設立趣旨、活動の背景、岩手のひとり親世帯の現状と生きにくさ、活動の3本柱である「生活支援」「子育て支援」「就労支援」について、当事者の隣にいてよりそうという今後の取り組みを話しました。この岩手の復興のキーワード包摂された社会(Inclusive Society)の実現に向けて、自己責任ではなく、社会の構造が排除しがちな人々を、日常生活で包み込まれる社会を構築することをビジョンとしていること、ひとりでも生き生きと子育てができる社会・最も生きにくい人に合わせた社会が、全ての人にとって生きやすい社会であり、それこそが、求められている復興支援であると提言しました。

全体討論は、十分な時間がありませんでしたが、岩手の具体的な支援制度について、母子家庭やシングルマザーという名称について、父子家庭だけでなく男性全体の子育てのしづらさについてなど、会場からの質問に答える形で議論が進みました。そして、ひとり親家族をめぐる問題は、当事者だけの問題だけでなく、社会全体の問題であること、つまり、子育てをしている女性が働き続けられること、男性が働きながら子育てができること、非正規雇用や被災地の就業支援のあり方など、広く皆で考えていくべき課題であるとの共通認識が示されました。

第3部の交流タイムでは、会場に残った方々が、自己紹介したり、挨拶をしたり、登壇者に直接質問をしたりなど、参加者同士で交流と親睦を深めました。


W500岩手日報2012.7.4

2012年7月4日付 この記事・写真は岩手日報社の許諾を得て転載しております
2012.07.04 Wed l ★シンポジウム l top